
今週のお題「夏の足元」
夕暮れ、空が少しずつ茜色に染まるころ。
遠くから、カランコロンとやさしい下駄の音が聞こえてくる。
岐阜県・郡上八幡。
石畳の町並みに、夏の足音がそっとしのびよる。
浴衣を着た人々が、橋を渡り、路地を抜けて、
ひとつ、またひとつと踊りの輪に加わっていく。
郡上踊りの音頭が流れはじめると、
町全体がまるで呼吸を合わせたように動き出す。
見知らぬ誰かと目が合い、ふと笑い合う。
踊りの輪の中に、境界なんてない。
夜風に揺れる提灯の灯りと、
耳にやさしい下駄のリズム。
ああ、これが夏なんだな、と思う。
心の奥で、ぽっと灯がともるような、そんな夜。